みんなが幸せになる経済と社会のしくみを考えよう

資本主義に替わる理想的な社会システムと未来のビジョンを提示します

第五章 どのように生体社会を実現するのか

 ここまでで、生体社会システム論の概略とそれが実現するであろう社会像について述べてきました。このような夢のような社会が早く実現して、貧困がこの世界からなくなること、世界が幸せに満ち溢れることが私の夢です。

 では、この生体社会をどのようにして実現するかという方法論が問題になります。この章では私が考える導入プランについてお話します。

 1917年からのロシア革命で共産主義国家であるソビエト連邦が1922年に成立しましたが、法治国家であり民主主義国家である日本でそのような血生臭い方法を採る必要はありません。
 私の役割は新しい社会システム論の種(シード, seeds)を提供することであって、それ以降の展開のシナリオやロードマップはこれに賛同する優秀な他の人に譲りたいと思っていました。しかし、「理想は分かるが実現不可能だ」、「実現のための具体案がない」という指摘も少なくありませんでした。そこで、私が考える実現までのロードマップを示します。

第1節 生体社会を実現する3種類の方法

トップダウン方式

 ではどのようにこの理念を実現するのがいいでしょうか。ここでは3種類の方法を示します。そのいづれにも共通するものとして、より多くの人々にこの考えを広めるということと、このまだ荒削りな社会システム論をもっと緻密なものに磨き上げる必要があります。その際に必要となるのが、知識人の集結です。知名度の高い知識人、メディアに影響力のある知識人の力が必要です。

 まず考えられるのが、トップダウン方式で、国家レベルでの生体社会システムの採用を目指すという方法です。この考え方を広め、賛同者を募り、その中から研究グループを組織します。イメージとしては大阪維新の会が大阪都構想を実現するためのシナリオのようなものになります。ただ、ターゲットは違います。大阪都構想は国の法律の一部を変えないといけないという点はありますが、大阪府がターゲットです。しかし、このプロジェクトは日本という国がターゲットとなります。つまり、大阪都構想とこの革命の実現では対象となるレイヤー(layer, 階層)が違い、大阪都構想は都道府県レベルであり、この革命は国家レベルだということです。

トップダウン方式には、次のような行程が予想されます。
・この考えを広める。
・インターネット上での実証実験を行う。
・この考えを支持する政党を立ち上げるとともに、既存の政党との連携をはかる。
・国民的な議論を巻き起こす。並行して、諸外国にもこの論を広める。
・既得権益者や抵抗勢力との戦い。
・国会で過半数を得て、国家レベルで生体社会システムの導入を目指す。
・資本主義社会からこの社会システム論に基づく社会へのソフトランディングを行う。

 このように書くのは簡単ですが、その道のりは簡単ではないでしょう。特に移行期のシナリオは私にもなかなか描けていません。ですので、知恵を結集し、共産主義革命がどのように起こったかなどを研究し、志のある仲間たちと実現のシナリオを一緒に描いていきたいと思います。

ボトムアップ方式

 別の方法として、ボトムアップ方式で、賛同者による小さいコミュニティから徐々に広めて、それを大きくし、やがては地域を巻き込み、日本を巻き込んでいくという方法です。
 この方法は時間がかかると思いますが、社会実験的に検証しながら進めていくことができるというメリットが考えられます。

ボトムアップ方式には、次のような行程が予想されます。
・この考えをネットや書籍を通して広める。
・ネット上にコミュニティを作り、そこで様々な商品やサービスの流通を行う。
・ネット上の実証実験で、不具合などを調整する。
・コミュニティ内企業(互助通貨が流通する企業)を創る。
・ベーシックインカムを導入する。
・日本円への依存度を減らし、コミュニティ内通貨で生活の多くがまかなえるように環境を整備する。
・最終的には国会の議決により、国家レベルで生体社会システムの導入を目指す。

 具体的にどのような流れになるかを説明します。参加者希望者は身分証明書をつけて事務局に登録します。問題なければ、事務局はアカウントとパスワードを発行します。きちんと管理するのは1人で複数の口座を持てないようにするためと、モラルハザードを起こさないためです。前述の取引例でもあるように、マイナスポイントが可能な仕組みなので、多大なマイナスを抱えたまま休眠口座状態にするとか、退会されると、コミュニティ全体が不利益を被るからです。こうならないように、マイナスにも上限を設け、一定額を超えるマイナスになる取引をすることができないようにしておきます。
 参加して、コミュニティの構成員になった人はそのサイトで自分が提供できる商品やサービスを開示し、自分が欲しいものや受けたいサービスがあれば書いておきます。後はネットでの売買になります。自分が欲しい物を検索したり、自分が売りたい商品を欲しがっていると思われる人を自己PRの欄から検索したりして売り込んでもいいでしょう。
 ログインした自分のページでは、取引履歴、残高、減価分として徴収された税の累計、上限を超えて税として徴収された額の累計などを閲覧することができます。税の累計が大きい人ほど、このコミュニティへの貢献度が高いということが分かります。

 そういった個人間の取引のみにとどまるならば、世界各地、日本でも行われている地域通貨の活動と変わりません。地域通貨のシステムは素晴らしいと思います。しかし、地域通貨は社会を変革する原動力にはならないと思います。その理由は後述します。

 トップダウンの場合、様々な抵抗勢力と戦わなければなりませんが、ボトムアップの場合、日本の隅々にまではびこる利権と対決するのではなく、白紙からグランドデザインを描くことができるという点がいいかもしれません。

海外方式

2つのシナリオを示しましたが、その2つとも失敗した場合、最終のシナリオも考えられますので、紹介しておきます。 日本以外のどこか小さい国で生体社会論を広め、その理念に基づくグループを成長させ、生体社会を実現します。それを全世界に理想的な社会システムとしてのモデルケースとして示すのです。どこの国が適切かは、今後集まってくるであろうブレインたちにお任せしたいと思います。人口が少なく、民主的な選挙制度の確立した国といったいくつかの条件を満たした国が候補にあがるでしょう。 現代の世界の行き詰まりを見てみると、日本でそういったムーブメントが起こってくると、かえって別の国の方が早く生体社会システムに乗り換える可能性も考えられます。特に、このIT社会では、海外への情報伝播力は目覚しいものがあります。 しかし、本当にこんなことができるのでしょうか。簡単ではないでしょう。しかし、資本主義はもう行き詰っています。他に永続可能な社会システムがあるでしょうか? 他にこれほど理想的な社会システムがあるでしょうか? 坂本龍馬が新しい時代の幕開けを夢見たように、私たちも平成の坂本龍馬の活動を始めなければなりません。 明治維新は約3000名で成し遂げられたと言われています。その大部分は命がけで理想社会の実現を夢見た若者でした。明治維新当時の日本の人口は約3300万人でしたので、当時の0.009%の若者の力によって成し遂げられたということになります。 私は既にこの戦いに参加しています。最初の戦いは、反対勢力との戦いではありません。「そんなことはできっこない」、「理想は素晴らしいが実現は不可能だ」という固定概念との戦いです。次に、「私にはそんな力はない」、「私なんかが活動しても社会を変えることなどできない」という個人が築いた限界との戦いです。それさえ突破すれば、既得権益者との戦いなど取るに足らない戦いではないかと思います。 私は素晴らしい未来を創るために、粉骨砕身して活動する人たちと共に活動したいと思います。坂本龍馬が歴史に名を残したように、この戦いに参戦し、勝利するならば、必ずや後世に名を残す者となるでしょう。そこまで献身的に活動できる人はごく少数だと思いますが、あなたにもできることがあります。この新しいアイディアをできるだけ多くの人に広めてください。そして、実証実験が始まったら、是非参加してください。お願いいたします。

第2節 既存の団体との連携を探る

地域通貨との違い

 ここで地域通貨について触れておきましょう。
 このアイディアは地域通貨の考え方なくしては生まれませんでした。そうした経緯もあって、この互助経済論や生体社会システム論は地域通貨に似ていると言われます。中には、地域通貨の形態のひとつに過ぎないと言う人もいます。地域通貨の中には通貨が減価する仕組みを導入しているところもあるからです。しかし、私はその両者は似て非なるものだと考えています。以下に主な相違点を述べます。

・互助経済システムは人体の仕組みを模倣している。
・人体の仕組みの模倣から、経済システムにとどまらず、社会システム論にも発展する。
・地域通貨で採用されることがあるゲゼルの減価システムに加え、貯蓄高の上限値がある。
・それらを税という形で集め、それにより行政サービスのようなことを行う。
・その使い道を決定するために、議会が存在する。
・個人間の取引に終わらせないために、コミュニティ内での企業を起こすことを目標とする。
・資本主義という枠内での活動ではなく、資本主義を代替することを目標としている。

 僭越ながら、地域通貨は法定通貨(日本円)を補完(足りない部分を補うこと)する役割であって、法定通貨の補助的な役割しか果たしません。
 しかし、私たちの最終目標は日本円に頼らず、電子マネーである互助通貨で生活を営めるようにすることです。そのためには、互助通貨で様々な製品やサービスが購入できるようになる必要があります。また、互助通貨で給料が支払われる互助通貨ベースの企業が必要不可欠です。しかし、最初から月収の100%が互助通貨ということでは生活できませんので、資本主義社会での給料と互助企業での労働からいただく互助通貨を併用するのが現実的でしょう。

各種社会福祉団体との連携

 地域通貨との違いは明確になりましたが、地域通貨のグループとは連携できると考えています。その他にも、経済的弱者を支援している団体、環境保護団体、労働問題に取り組んでいる団体など、社会を良くしようと私利私欲なしに熱心に活動している全ての団体と協力できるのではないかと考えています。
 例えば、環境問題に関しても、この生体社会が実現した場合の環境に対する負荷の軽減は計り知れません。倹約とか効率化とは次元が違うぐらいの効果がありますし、労働問題も根本的な解決が可能です。